■参加アーティスト 日誌より by ヤザキタケシ

3月3日       
3月4日
3月5日
3月6日
3月7日
3月8日
3月9日
3月10日
3月11日
3月12日
3月13日
3月14日
3月15日
3月16日
3月17日
3月18日



3月3日 日曜 
デトロイト(吹雪)経由で約15時間かけてフィラデルフィア(晴れ)に到着。 
その晩早速ディナーをとりながら全員でミーティング。明日から始まるプログラムを決める。Head Long Theater アンドリュー&ディビッド(フィラデルフィア) サラ&パトリック(ニューヨーク) 室伏鴻(東京) ヤザキタケシ(京都)他 ディレクターのローレル 通訳のMARIE・KEIKO オーガナイザ−のエレン 
 
 
3月4日 月曜 晴れ ベリーコールド
 (Head Long Theaterのスタジオにて)
 今日はHead LongのアンドリューとディビッドがリーダーでWS。全9名
 最初カンパニーメンバーのクリスティーのいわゆるモダンダンス風のエクササイズから始まる。と横をみると全身黒ずくめのジャージに身を包んだ室伏さんが気まずそうにニコニコしながら楽しそうに動いている。(室伏さんのこのような姿を見るのはこの先も私一人だけの特権かも・・・) 
次に始まったのは、45秒という設定でソロのインプロである、動きのクオリティーに指定はない。周りの人はこのソロに参加してもしなくてもよく、45秒で曲が途切れた後、順番に前の人がやったものを受け継ぎ、自分の動きにして行くというものである。
 最初45秒は短いのではと思ったが、色々と考えていたら動けない、とにかく大脳で考えて動くのではなく感覚神経を敏感にしなくてはいけないという点でおもしろいエクササイズである。アメリカ側のダンサーは慣れているらしく最初からバンバン絡んでいき様々な動きのバリエーションを創り出していた。 
後半は彼らの新作の制作過程を共有するというものであった。 
現代のポップカルチャー(具体的にバックストリートボーイズとブリトニー・スピアーズ)とダンテの神曲をMIXしたものである。 
アンドリュ−曰く「現代のポップシーンは好きではないが、彼らの持つパワーと社会への影響力の大きさは否定できない、それを深く探って行きながらも楽しい作品にしたい」というものである。 
まず4つのグループに分ける。1、ファッション誌のスターインタビュー 2、本 3、グラビア写真 4、MTVから取ったビデオ これらから得た情報でそれぞれに感じた事をグループでまとめて最後に発表するというものであった。 
自分も制作過程に参加したぶん出来あがりがとても楽しみである。 
 
3月5日 火曜 晴れ ベリーコールド
 
今日はサラ&パトリックがリーダーでWSする番である。 
ウォーミングアップは身体に優しい呼吸法をたくさん使ったものであった。フロアー中心のムーブメント。そして次に、エネルギーを使って動くのではなく、吐く息に身をゆだねて身体が引っ張られるように動く事でバリエーションを作っていき、インプロに入っていくというもの。 


次は、「チェンジ」と声をだしながら身体の形を変えていく動き。動きと共に「チェンジ」と言わなければならないので断片的にしか動けない。二人組みになりお互い相手の動きに反応しながら進行する。一組目は二人とも声を出して、二組目は片一方だけが声を出す、三組目は声なし、観ているとお互いタッチはしないが間と間(時間)・(空間)のコンタクトインプロビゼーションの様でおもしろい。三組目は声がない分自由に動いてしまい動きとしては普通になっていたようである。声という抑制された中で以外な動きや発見があった。 
午後からLeah Stein Dance Company のリハーサル見学 
女性4人男性1人のカンパニー 
コンタクトインプロビゼーションを使って動きを模索している最中であった。 
 
3月6日 水曜 晴れ 
11:00  
長い階段をロッキー【映画】が駆け上がり星条旗の下ガッツポーズをしていたフィラデルフィア美術館へ・・・ 
ここではこの美術館のプロデューサーに会い、毎週水曜日に行われているパフォーマンスについて話を聞く。
 
10年前から様々な年齢層を美術館に足を運ばせる為に、水曜パフォーマンスと称して音楽のライブ・映画・芸術家のトーク・ダンス(hip hopからバレエまであらゆるジャンルのダンス)・芝居・などを毎週水曜日に招待して($300から$800のギャランティ)メインフロアーで公演するというものである。すばらしい試みだと思います。日本でもこの様な試みが増えれば我々もがんばりがいがあるのですが・・・・
 (その後スーパージェットラグに突入) 
 
3月7日 木曜 ウォーム
11:30 
室伏さんTemple university にて特別講師 
パトリックと通訳のROKOさんと共に受講する。 
生徒は全部で約20名、若者の中におっさん約2名(ちなみにパトリックは私より年上であります)隣には鼻輪ピアスをしたブロンドやジーザスもどきのロン毛やホッパーなど多種多様なキャラクター勢揃い、どうなる事かと心配したが、始まると皆以外に素直で一生懸命なのにはびっくり。
 
まずランニングと軽いジャンプで身体と心の緊張をほぐす。次に呼吸のバリエーション。
最初はゆっくり呼吸に合わせて身体を動かす、しばらくしてから一瞬にして身体を脱力させたり、緊張させたりする。さすがにKoさんが見本でみせる速さは尋常じゃありません。
 次に型の練習(ブッダとジーザス)、次に火と水のイメージで動く。なんせ時間が普通の授業時間(1時間半)しかないのでこういうものがありますよ、という紹介で終わってしまいましたが、途中から何人かは動きがハードな為見学に回ったりする程、初めての人間にはきついものでした。(タフでなければ舞踏は出来ない)
 

午後からはヤザキがリーダーでのWS。 
フロアーからの軽めのストレッチから始める。胡座をかいたまま転がるストレッチは好評。寝た状態で指定した身体のポイント(指の先・左右の骨盤・つま先・額の真中)で転がるストレッチなどなど。 
次に立ち上がり、ソロで動く時の一つの方法論を提示する。 
身体の中の細胞は一つ一つ意識を持っているという考えで、身体を細かく分解し、自分の意思で動くのではなく、出来るだけ自分の頭で考えないで反射的に身体の一つのポイント(細胞)が叫んでいたり、囁いたりしているというイメージで動いてもらう。さすがに彼らは呑込みが早くすぐに動きだし「ストップ」をかけなけば何時間でもやる勢いであった。 
次にスタジオを斜めに歩いて横切ろうとすると突然細胞達がしゃべりだし身体が勝手に動きだすというシチュエーションで一人一人やってもらう。
 
そしてそれぞれの印象を語ってもらう。アンドリュー曰く、同じイメージでやっているにも関わらず見え方が三つのパターンに分かれていると、Koさんは別の生物に成りきっている(声まで出してやり切ってくれました)、タケシはどこかで醒めていて自分を見ている自分がいて、アメリカの3人は動きだけが見えると。 
人にやってもらうのは初めてだったのですが、こんなに様々な動きのバリエーションがある事に新鮮な驚きを感じた。 
 
3月8日 金曜 晴れ ウォーム 
10:00
 劇場にてスタッフと合同ミーティング
 
11:30  
フリンジフェスティバルのディレクターとミーティング。
 
6年前にエジンバラ演劇祭を雛型に始められた 演劇・音楽・ダンス・パフォーマンスなどの国際的なフェスティバルである。毎年9月に開催中。
 
13:30  
CEC(スタジオ&劇場)ディレクターとミーティング 
コンテンポラリーヒップホップのディレクター(レニー・ハリス)に話を聞く、ヒップホップも元をたどれば、ブルースやジャズなどと同じでスピリチュアルなものであった、でも今は動きを習うものになっている。ピークは1984年であったらしい。そして今彼がやろうとしている事は伝統的なアフリカンダンスをミックスさせてコンテンポラリーなヒップホップを作る事。
 
14:00 
グループモーションのリハーサル見学
 コンタクトインプロビゼーションで動きを模索中。 
コンタクトの面白みは、今まで見たことのない面白い動きを創ったりする事以外に、肌と肌のセンシティブな触れ合いからしだいに高揚し、エネルギーがお互いの身体を行き来して動きが生まれしだいに気持ちよくなっていく、そして見ている人にまでその気持ち良さが伝わり、見ている人も高揚して来るぐらいでないと、ただの動き遊びを見せられているような感覚になってしまう。・・・と思う。 
これはリハーサルなのでこれからどこまで深められるかが問題。・・・だと思う。
 
15:00 Koさんと公園でコーヒーを飲みながら恋人たちのように語らう事2時間。
 
18:00 
Head Long の新作 創作過程一般公開の見学 
初日のWSでやったテーマのもの 
まだまだ初期の状態である。題材もアイデアもユニークなのでそれをどう繋げてどう作品にして深めるのか、これからの作業が大切である。
 こういうプレゼンをやれる事はいいな。 
自分の稽古場と時間があるのはもっといいな。 
スポンサーも気軽に呼べてだんぜんいいな。 
見習いたいな。でも・・・
 
20:00 
ワシントンバレエ観覧
 1部       エタ・ジェイムス(ブルース)の曲を使った小品 
2部       トワイラ・サープの振付の小品 
3部       ライブでキューバ音楽の作品
 皆とても辛口意見です。(私も含めて)
 
基本的にどんな曲を使おうがバレエ特有の身体の使い方、上半身を板のようにキープしている型は崩さないので動きのおもしろみがなくなってしまう。またたとえいい感じで時間も風景も流れていたとしてもプレパレーションに入って、ピルエットなどを多く回っているのを見せられてもそれで冷めてしまう。バレエは古典をやるのがいいのでは。 
その後ここの劇場のプロデューサーとミーティング 
 
3月9日 土曜 曇り時々雨 ウォーム
 
12:00から17:00 4組で一般の参加者向けのWS
 1・サラ&パトリック 
床や壁を使ったウォームアップ、しっかり対照物に触る事から、しだいに場所を移動していき床や壁とのコンタクトインプロビゼーションになっていく。
 
次に3人組みになり、6つの要素(爆発・伸びる・回る・場所移動・方向転換・視点をずらす)これを3人一組で動きを作っていき後で発表するというもの。
 
それぞれのキャラクタ−に合う動きやタイミングが自然に出てきており、5組あって5組とも違うイメージであった。とても単純だけれどおもしろい試みである。同じ動きで2回目は曲を変えるとまたぜんぜん違って見えるのがまたおもしろかった。
 
2・Koさん 
呼吸がテーマ 
呼吸の振幅の違いで身体の動きをコントロールする事。 
時間をかけて脱力と緊張の繰り返し。身体の芯を作り小さな呼吸だけで、つまり気配を消して歩く事。呼吸と動きが同化してその振幅を使って歩く事。 
とにかく舞踏はもっと時間がある時にたっぷりと味わってみたい。
 
3・ヤザキ
 テーマはソロ
 前半は内からのエネルギーを感じて、7日にやった事を短時間で。 
後半は外からのエネルギー、空気を実際に感じて触る事から、そこから自分でどう触って行くか触り方を考えてもらったり、空気中から蜘蛛の糸をひっぱり出して、それに一旦絡まって抜け出てもらったり、最後は内からと外からのミックスで動いてもらったり、時間が短いので駆け足でやってもらった印象である。皆、私が言うとすぐに何の躊躇もなく動くのにはびっくりです。
 
4・Head Long 
前半 アンドリュ−
 
3人一組、お互いの目を見詰め合う事から(Koさん!以外と照れ屋さんですぐ笑ってしまう) 見詰め合う事で3人の間で風や水のイメージを作り、3人の関係をキープした状態でお互いの動きに敏感に反応しながら共に場所を移動して行く。
 
後半 ディビッド
 
スタジオを一つの大きなキャンパスに例え、それぞれ自分の位置や存在を客観視して、どう見えているか考えながらインプロで動くというもの。これは決して自分の中に陶酔しないように客観視するのが大切である。やっていると以外にもただのフォルムに陥るのでなく、動きにドラマ性が出てくるのが面白かった。
 
20:00 
CECへパフォーマンスを見に行く
 
セリフ・唄・ダンスが交じり合った、キャバレー風なパフォーマンス。(1時間)
 ノーコメント
  
3月10日 日曜 晴れ ベリーコールド
 14:30 マーク・モリスの公演へ 
1部は2002年制作 エリック・サティのピアノライブに乗せて、私服の男4人が淡々とシンプルな動きで1曲ごとにバリエーションを見せるという形のもの。
 
2部は1998年制作 ブロードウェイもどきのショ−感覚の作品。
 
3部は2001年制作 シューマンの曲に乗せ複雑な動きと複雑な構成で創られたもの。
 
音楽をそのまま踊りにしてしまうという事が特徴であるらしいが。考えたらただ曲に合わせて振付しているだけでそれ以上の意味は見つけられない。でも時間をかけて楽しみながら創っているのは伝わって来ます。コンテンポラリーダンスというよりモダンバレエの印象が強かった。個人的には1部の最後に踊ったしっとりゆったり平凡な動きを4人ユニゾンで踊っているとこが興味深かった。
 
サラ&パトリック&エミー(Head Long)も怖いぐらい辛口なのにはビックリ。 
 
3月11日 月曜 晴れ 
あの事件9月11日から半年、朝からTVでメモリアルな日としてのニュースがひっきりなし流れている。
 
10:00 Koさんテクニカルリハーサル。 
14:30 
NYからDTWのザックとジャパンソサエティの塩屋さん合流しミーティング。来週からのNYのスケジュールについて意見を出し合う。 
個人的に私は15:00から劇場でテクニカルリハーサルが入っていたので途中退場。 
19:00まで通訳のROKOさんに付き添ってもらいリハーサル。ROKOさんはダンサーでもあるので変りに踊ってもらったりして照明の具合を確認して無事終了。 
しかし照明の数が十分でないため、水曜日にもう一度確認予定。 
その後今回始めてのジャパ食!$25食べ放題のSUSHIレストラン。  
 
3月12日 火曜日 曇り ベリーコールド
 Head Long とサラ&パトリックがテクニカルリハーサルを1日かけてやる為、日本側は始めての全日休日。 
ROKOさんにガイドしてもらいROKOさんのアトリエとエドガー・アラン・ポーの家とフィラデルフィア美術館へ行く。Koさん誘うも「あたしゃ 休んでるよ」・・・と。 
残念ながらポーの家は休館日だったので、大鴉のモニュメントの前で写真を撮る。 
美術館では、地元のフランスよりも多いというマルセル・デュシャンのコレクションに感激!さすがにアメリカで3本の指に入ると言われるだけあって、広大で見ごたえのある美術館でした。それにROKOさんがこちらの中学で美術の先生をしていたらしく、色々な見方や感じかたを押しつける事無く教えてもらい中身の濃い休日となりました。 
  
3月13日 水曜日 雨
15:00 
私だけ早めに劇場ヘ行き月曜日に出来なかった照明の確認。
ちなみに今回の作品は、JCDN「踊りに行くぜ!!」でセッションハウスと前橋でやった「スペース4.5」―タナトス小僧のエロスな気分― を用意してきており、テープ張りとカツラはパトリックとディビッドにお願いする事にしました。
キャパ200ぐらいの劇場で客席のスロープも良く、どの位置からでも舞台全体が見えて観客にもパフォーマーにもやりやすく見やすい劇場である。
それとここのテクニシャンがとてもユニークである、マディソンという小柄でスキンヘッドで若くて目のくりっとしたパンクなお姉ちゃんが、一人で走り廻って照明と音響のプログラムを作っているのです。オペレーターは照明・マディソン、音響・マディソンの指示で動く学生アルバイトである。と・ちょっと不安がよぎる。

17:00
それぞれ場当たりやきっかけの確認などをする。
ペイント(Koさん)氷(サラ&パトリック)マイクロフォン(Head Long)などを考慮して順番が決まりました。1・ヤザキ 2・サラ&パトリック 休憩 3・全員でインプロ数分 4・Head Long 5・Koさんとなりました。ちなみにサラ&パトリックの作品にはKoさん以外参加。3のインプロも我々の他にROKOさんとHead Long のニコールが参加。

20:00
ゲネプロ
アメリカ側アーティストの作品は二組共にセリフのシーンが半分ぐらいあり、その部分はあまりよく分からなかったのですが、最後には言葉を超えたイメージが伝わってきました。
サラ&パトリックは深い悲しみや怒りのようなものがズシーンと、Head Longは現代アメリカの若者達の迷いや訴えのようなものがケラケラと。‘89年NYに来た時もセリフを使ってダンスするスタイルは見ていましたが、今はそれが主流になっているのか?この事については後々質問してみよう。
さてムッシューKoは生命そのものがそこに存在している事をシンプルにディープにいとも簡単に見せてしまう。まるで自分が買ってきたばかりの珍しい種類の爬虫類か肉食獣かエイリアン(売ってない)を檻もしくはガラスケースの中に入れてぞくぞくしながら見ていると、突然それが自分に話しかけてくような恐怖感・飼ってるものと飼われてるものとが突然逆転するイメージによって引き起こる自己喪失感などがあり、ドキドキ(深い意味)させてくれました、流石です。
明日の成功を祈ってKoさんの部屋でビールで乾杯!

3月14日 木曜日 晴れ 小春日和
18:00 劇場で軽くインプロのセッションとそれぞれのキュー確認
(ちなみにKoさんは、午前中一人でフィラデルフィア美術館へ・・・やっぱり火曜日に行かなかった事が心残りであったようです)
今日始めて、遠征から帰って来たばかりのメインの音響テクニシャン(ダン)が音だし、時間がないので音きっかけの前後だけを確認して、ぶっつけ本番である。
もう開き直るしかありません。何があってもやり通すだけです。終わりました。やっぱり色々ありました。それがライブ!
それに反して観客の反応は良かったので、まあ良しとします。が自分の作品の中での自分の在り方に反省点がたくさんあります。(特にムーブメントとダンスの間の組立)後何の問題もなく最後まで順調に運ぶ。

3月15日 金曜日 晴れ
本番2日目  ローカルのテレビ局が公演を撮影。
個人的には今日の出来の方がG00D!作品の中での新しい試みがうまくはまったようで
した。ここでは具体的なことは言えませんが、今まで自分では良いと思っていたこだわりを捨てる事によって新しい展開が生まれてくる事がある。でもどれを捨てて、どれを残すかが問題ではありますが。常に良い意味で変って行きたいものです。
Koさんは、初日に比べて言葉(作品の中でアドリブで独り言を言ったり、観客に話し掛けたりする事)が多く出てきておりました・・・・・・とにかくすごいコールを受けて終了。
サラの作品の中で普通にしゃべるシーンがあるのですが、今日は関西弁で試してみ
る。緊張せずやっと楽にしゃべれました。
Headlong は日本でいうコンドルズのような感覚で、セリフと踊りを使って、観客を始終笑わせておりました。

3月16日 土曜日 曇り
本番3日目 観客数も毎回増えて今日がマキシマム何事も起こらず無事終了。
海外の公演では必ずあるレセプション(ロビーを開放しての立食パーティー)でそれぞれがそれぞれの感想を聞き、喜んだり、反省したり、参考になったり、励ましたり、励まされたり、そうやって次への活力として楽しいひとときを味わう。
過ぎてしまえば「あっ」という間! ―世の常―明日からはNY! ひとまずはゆっくりしたいのである!

3月17日 日曜日 晴れ
10:00 チェックアウトしKoさんと二人、ROKOさんの車で約2時間かけてNYへ移動。(車の中、始終しゃべりっぱなしのムッシューKo)
2ndAV、14stのアパートメントホテルへ到着。
二人ともフィラデルフィアの超豪華ホテル(シルベスタ・スタローンやビートルズが泊まってたホテル)との落差に唖然。気を取りなおし、学生気分でがんばろう!

3月18日 月曜日 雨 
昨日は気づかなかった、ダイレクトに聞こえてくる外のノイズ、時間が経てば微妙に分かってくる部屋の傾き、結局4時頃まで寝られずストレス溜まる。
Koさんは昨日からご立腹なので、二人してホテルの移動を要請する。(二日か三日なら我慢しますが2週間は無理)
とりあえず、10:00―12:30 ジャパンソサエティーの舞台でワーク。
サラ&パトリック、アンドリュウ、ヤザキそして今日がリーダー当番のKoさん。舞踏のクラス死体の呼吸・ニュートラルな身体・ゼロ状態・1枚の紙を立てそれが1ミリもない隙間を縫う様に歩く。次にこの歩いている状態から「好きな様に踊ってください」と言われる。
まるで禅問答でも受けたかのように、集中しようとすればする程、様々な事が頭に入ってきて動けなくなってしまう。Koさんの様に自分の意思や身体をも裏切る様な動きをしようとすればする程わざとらしくなってしまう。(最近の傾向として客観的に自分を見すぎて、自分の中へ集中する事が希薄になっている)逆に、舞踏を初体験するサラ・パトリック・アンドリュウはよく集中出来た様である。

12:30−14:30
これから2週間のスケジュールの確認ミーティング。
我々5人の他、DTWのザック、JS(ジャパンソサエティー)の塩屋さん・宮井さん・平野さん・夢さん(From京都)

15:00
ACC(Asian Cultural Council)でディレクターのMrラルフとミーティングフィラデルフィアで行われた事・今の状況・展望・質問などそれぞれが思っている事を報告する。

17:30
念願叶いホテル移動。45st between 8Av and 9Av のアパートメントホテル。
部屋の中にちゃんとトイレもキッチンも付いてるよ。

20:00
ジャドスン・チャーチ・(有名なので詳細は省略)月曜パフォーマンスを観劇 
(1960年代から行われている前衛ダンスのメッカ)Koさん宮井さん夢ちゃんと共に・・4組がそれぞれ20分ぐらいの持ち時間で作品を発表する無料の公演。
内容はともかく(あまり書きたくない)、この様な実験の出来る場所と時間(毎週月曜日)があるのはいいですね。お客さんも150から200ぐらいはいましたし、いいプレゼンになります。

3月19日 火曜日 曇り ベリ−コールド
ほとんど寝る間もなく7:30に起床
9:15−10:50
プロフェッショナル・パフォーミング・アート・ハイスクール にてヤザキのワークショップ。7年生(12・13歳)の難しい年頃28人。通訳に彩さん(舞台女優)がついてくれる。
他、JSから塩屋さん、平野さん、みなもとさん、宮井さんら視察。アンドリュウ、パトリックは私の手助け。Koさんはほとんど見学。
仰向けになって声を出しながらの呼吸から始める。皆楽しそうに腹の底から声を出す。簡単なストレッチ後、歩く事。(早く・遅く・一定のテンポを保つ・止まる・歩き出す)バリエーションを変えながら指示を出す。

次に二人組みになり、鏡のエチュード。お互いを観察しながら同時に動く、どちらが指示を出すでもなく同じ動き、表情まで真似る。後半は二組に分かれてもらう、教室の端と端に分かれ真中まで鏡の動きで来て、座るか寝るかして起き上がり背中合わせで元の場所へ返っていく。(観る・感じる・動く・集中する・これらの事が同時に行われる)パトリックとアンドリュウにデモンストレーションしてもらう。(大きな拍手)
その後皆にやってもらう。それぞれの個性に応じてなんの躊躇もなく真剣に楽しく自由に動いている。何か感想があればどうぞ、というと次から次へと手を上げて自分の感想を言ってくれました。その内容は、ほとんどが自分が面白いと思った事をはっきりと自分の言葉で言っていました。さすがにポジティブで明るい国です。
とにかく私としては大仕事!無事終了して一安心!

12:00−14:30
昨日の続きでKoさんの舞踏WS
我々の他に、彩ちゃん・ケイト(サラのカンパニ−)参加。
呼吸と動きを使ってニュートラルな身体を見つける。そして死体の呼吸。
これらの事は、方法と言いかたは違うが私が普段意識しようとしてる事と同じ事である。
がそこからのトランスフォーメーションの仕方が半端じゃ出来ないのです。
終了、久し振りのフリータイム。

JSお薦めの2000年トニー賞を受賞したミュージカル「コンタクト」リンカーンセンターへ、Koさんと連れ立って見に行く。うーん内容も演出も振付もとてもありきたりで中途半端な印象。Koさんは私以上に辛口。
このままでは帰る気しないと、タクシーを飛ばしてジャズクラブ(ヴィレッジバンガード)へ、しかし時間が合わず(シカゴブル−ス)へ鞍替えしようもそこは閉店。
さらにタクシーで42stの(BBキング)へ。そこで最後の15分だけのライブを味わう。
今度は当たりをひきましょうと決意を新たに帰路につく。

3月20日 水曜日 雨 ベリーコールド 休日
思う存分寝坊する。(Koさんはちなみに歯医者へ通院)
昼からひとりでホイットニー美術館の「ホイットニー・ビエンナーレ2002」へ行く。
普段は主にアメリカの現代美術、ジョージ・オキーフ、デビッド・ホッパー、ジャスパー・ジョーンズ、ウォホールなどを所蔵しているところである。が今回はビエンナーレと言う事で、映像・サラウンドノイズミュージック・写真・インスタレーションなどなど様々なものが展示されている。絵画では油彩で描かれた漫画の様に分割された絵と、水墨画の様な手法で描かれた妖怪の絵。廃墟の中にダンボールで作った大きい人形をモデルに写したモノクロ写真。現代の若者の暴力的なシーンをぼかして撮ったもの。すりガラスを通して見る赤いネオンサインの映像。など他にもたくさん興味深いものがありました。総じての印象は、抽象的なものより日常的で具体的なものを視点を変えて(まるでデュシャン)遊び感覚をはっきり表に出して見せるという傾向なのかな、という印象をいだきました。
あくまでも個人的見解です。

3月21日 木曜日 晴れ ベリベリコールド     
10:00−12:30
パトリックの要望で今日も引き続きKo舞踏クラス
今日は主に身体より頭の中に重点を置き、(色気・「ほっ」の話・はかなさ・もののあわれ)など、英語にはない日本独特の言いまわしの言葉、つまり「美」について語りました。この事だけでも本が一冊かけるぐらい深い内容、それと私にはそこまで詳しくは書けましぇンので、あしからず・・・「Koさんに本を書いてもらいましょう」例え簡単に要約して書いたとしても、軽くなるしうそになってしまうような気がします。だから私は踊るのです・・・なんてね!
そしてこれらの「言いまわし」が我々と同じ様なイメージで伝わるのかどうか?育った環境も受け継いでるDNAも違う?ので、同じ感覚でしかも言葉では伝え難いのではないでしょうか。でもこの事が舞踏を通して、彼らが一番知りたがってる事だと思う。

13:30
ラママへ(彩さん・ザック・パトリック・Koさん・夢さん)
寺山修司(天井桟敷)「毛皮のマリー」・東京キッドブラザース「黄金バット」・大野一雄・田中ミン・白石加代子など他日本のそうそうたるメンバーが公演を行ったといわれる劇場の名物ディレクター(エレン・ステュワート)とミーティング。キャパ50−80ぐらいのクラブハウス・キャパ100ぐらいのシアター・キャパ100−300ぐらい自由に創りかえられるモバイルな大劇場(ピーターブルックなどが使用)の3つがある。
日本との深い繋がり(天皇陛下から勲章を貰ったとか)、ラママの歴史、世界中のパフォーマーとの出会いなど、ハリウッドスターのインタビューの様に朗々と語ってくれました。迫力満点である。ちなみに私は13年前ここで踊った事があるのでした。舞台監督さんは、しっかり覚えていてくれておりました。

15:30
セントマークスチャーチへ
ダンスペースプロジェクト ディレクターのローリー・Uprichardとミーティング.。
打って変わって、上品でエレガントでスマートな印象の貴婦人。このチャーチも毎週劇場として使用されており、WSなども行われている。ラママが演劇志向ならここは、モダンダンス・コンテンポラリー志向、詩の朗読会なども行われたり、演劇専門のミニシアターまである。たまにレンタルスペースとしても使っているとか。ここではじっくりと作品と向き合う時間を作ってくれるそうである。(パトリック談)

17;00
PS122へ(元パブリック・スクール、今パフォーマンス・スペースの略)
プロデューサーのマーク・ラッセルとミーティング
演劇専門のミニシアターとダンス専門のシアター(キャパ100−200)の2つ。
ここの観客はアーティストが多く、マニアックな感覚で様々な実験的な試みがなされているらしい、ダムタイプの始めてのNY公演もここで行われたらしい。後タナカミンさんが50歳の時にこの先簡単に死ねないようにと、毎年ここで40年間公演する事を契約したそうである。NYではここで認められたら、次にDTWへ進出するといった流れがあり、その次はジョイスシアター。PS122はメジャーへの第一関門である。

20:00
DTW(立替中なので借りの劇場42st)
ダナ・ウチゾノさんの公演
痺れるような閃光が脳裏に焼き付く様なすばらしい導入であったのに・・・・・?
1部2部合わせてダンサー4人。いいダンサー達であるが、強制されて踊らされてるような印象であったのが残念。創り方、演出(音と動きの扱い方・こだわった動きとそうでない部分のバランス)の仕方が問題?(こう言いながらも全部自分に帰ってくる事は十重に承知しております)でも「LOW」という新作の最後の方の足をからませながらのタンゴ風ダンスは洗練されていて美しい流れであった。

3月22日 金曜日 晴れ ベリベリベリコールド
10:00−12:30
今日はサラのリーディングです
まずストレッチ(フロアー)から、そして立ち上がってパートナーを見付けて簡単なステップをお互いに向き合ってする。
空気・石・水・鉄などの要素を元に、インプロジャム。サラから指名された人が次々とリーダーになって行く。タイミング・位置関係・動きのクオリティーなど意識しながら、反応して行く。個人的にはただフォルムを真似るだけでなく、動きの質を感じる事に重点を置く。自由に動ける分必要以上に動いてしまい、後々疲れてしまった。(まだまだ幼いね)

13:30
公演の為のスタッフミーティング
Koさん・ヤザキ・サラ&パトリックの順番

16:30
BAX(Brooklyn Arts Exchange)へ
DTW主宰で行われているアウトリーチ(芸術を一般の人達に紹介したり、参加してもらったりする事で、芸術を身近に感じてもらおうとする為のWS)
サラ・イースト・ジョンソンの子供(5−12歳女子)へのアウトリーチ彼女はサーカス・ダンス・映像を使ったパフォーマンスカンパニーLAVA Companyを主宰。
WSで集まって来た子供達を12人選び、1年目は彼女が創作し、2年目は自分たちだけで
創作する。長期のWS(1週間に1回)。年齢差が大きく異なるのは、人間関係を自然の形で学ばせる意図がある。何故女子ばかりなのか、男子は小さい頃から野球やバスケットなどさかんにやっているし、チームワークを重要とする為らしい。
目的は子供の時から芸術に親しみ、将来的にこの様な道がある事を示唆したり、同時に将来の観客層を広める事も考えている。(同じ様な理由で、フランスでも子供向けのWSなど盛んにやっている)日本は?

20:00
ユニオンスクエアのサブウェイから地上に上がる・・・
「月に向かって真っ直ぐ伸びた、痛い程に冷たく美しく光る2つの青い柱!」
ワールドトレードセンターの1ヶ月間限定のモニュメントである。

PS122にて なみ・やまもとさんの公演を観る。
なみさんと他2人のアメリカ人ダンサーとミュージシャン5名ダンサー3人とも見てるだけでも楽しくなるキャラクターで好感を持てました。が一つ一つのアイデアもおもしろいものがあるのですが、それがただ羅列されてるだけの印象を抱きました。かといって繋げてストーリーを作ればいいわけではないのですが・・・
(日常の中に潜むアイデア・笑い・セリフ・身体性で見せるダンスでなく乗りで見せるムーブ)これは一部分ではあると思いますが、今回観たアメリカ若手作家の作品はこれらがキーポイントととして作品が作られてる印象を抱く。風邪ぎみ。すぐホテルに帰り薬を飲み早く寝る。

3月23日 土曜日 晴れ
11:00−13:00
サラ&パトリック、一般向けWS。私は用心の為欠席。

14:00−16:00
Koさん、一般向けWS。
身体の調子も戻って来たので、14:40ごろWS見学の為会場へ足を伸ばす。
「ブトウ」という名の威力か、「コウ・ムロブシ」という名前の威力か分かりませんが、定員をはるかに上回る大勢のアメリカ人が受けに来ておりました。(恐らく前者であらうよ)
その中には、JSの塩谷さんと平野さんの姿も・・・
見てる限りではダンサーであると思われる人は数人で、他全般は一般の人。
いつもやってる事の半分以下ぐらいの量で進行しておりましたが、返ってその方が受ける方には優しく分かりやすく、身体はハードだけど心地よい汗がかけたようでありました。
20:00
Aaron Davis Hall にてアルビンエイリーUの公演
13年振りに味わう懐かしい感覚、そのころの知り合いが今回、リハーサルディレクター(デリック)振付師(トロイ)として参加しておりました。
今では作品における志向性が全く違うので、作品を見ても楽しめなかったのですが、彼らのショーイングする身体とでも言いましょうか、足の上がる角度とか長さとか、背中をそる角度とか、パッション・パワー・・・容赦ない凄い物を見せてもらいました。
ちなみに日本人のせがわかんじ君、いいポジションで踊っておりました。彼のお兄さんはパリでダンサー(かんいち君)、兄弟そろって世界でがんばっております。

3月24日 日曜日 晴れ
11:00−13:00
ヤザキ、一般向けWS。(JS塩谷さん、平野さん含め、10−15名)
それぞれの自己紹介後、フロアーから(身体のポイントを使って転がるストレッチ)
両手両足を上げて転がるのは初心者には不向き。
歩く事、パフォーミングアートスクールでやったものを少し変える。(合図を出して止まる、次に歩き出す時に合図を出さず、自分の中でフリーズから溶け出す感覚と、他人との関わりを感じながら解けて歩き出す)。スローで2セット歩いてもらう。2セット目は、自分で身体がどう動いているのか、その全てをラジオのアナウンサーの様に実況中継してもらいながら歩く。「そうする事によって、普段難しいと思っていたゆっくり歩く事がやりやすかった」または「全てを中継しようとすればする程、動けなかった」「動きと気持ちがとてもクリアになった」など様々な意見を頂戴する。

次に緊張と緩和の間の身体性を使って(これが難しい事でした)まずは手の平の緊張と緩和の動きを繰り返して次に肘、肩、腰など次々にポイントを変えて行き、それを使って自分の名前を空間に描く。テンポが速すぎて、初心者の人には不親切であった。反省!
時間を気にして、詰め込む様に最後の動き(セルフコンタクト)へ持ちこもうとして中途半端になってしまった。反省!こういう初心者も経験者も混ざり合う1回だけのWSの時はあれやこれやしようとせず、用意している事の半分ぐらいをじっくりと味わってもらいながら、もしくは簡単な事をテンポよくやるべきですね。ハイ!
*(ここで悔しさのあまり自己弁護・プロのダンサー達は終わってから、面白かったと声をかけてくれました、ヨー!)

14:00−16:00
Headlong(アンドリュウ・デイビッド)WS
簡単なウォーミングアップの後、二人組みになりお互いの歩き方を観察する。離れたり、一緒に歩いたり、後からお互いの歩き方についてコメントし合う。自分のきずかなかった自分の癖の再確認になる。次に全員で歩く、客観性を持ち舞台で自分がどの位置でどう歩けばよいか考えて歩く。次に目と目を見ながら、お互いをじかに感じながら同じ動きをする。リーダーが途中でスイッチし合う事で、観察力と反射神経が養われる。

次に3人組みになり一人一人が3つの動きを創作し、それぞれが教え合い9つの動きを覚える。タイミングはお互いを感じる事で決まる。
最後に3組に分かれ、舞台の上で行う。最初の一回はなるべくお互いを意識しながら合わせて動き、次にはその要素は残しながらインプロへ入って行く、それぞれ組ごとに違う曲をかけ曲が終わるまで踊り続ける。さすがに彼らは普段、高校や大学で教えているだけあって手際が良く、ためになります。サラ&パトリックにしてもWSのエキスパートであります。その後待ってましたフリータイム(Koさんとつるんでダウンタウンへ繰り出す)

3月25日 月曜日 曇り 休日
15:00
MOMA(近代美術館)Gerhard Richterの特別展。
スーパーリアリズムからスーパーアブストラクト(こんな言葉はない)ととんでもなく幅の広いジャンルを、自由にそれもいとも簡単に行ったり来たりする、天才的確信犯という印象のアーティストである。特に60歳を過ぎてからの色彩には感動。Koさん曰く「黒澤だ!これは・・・」。他近代美術のハイライト、ピカソ「アビニョンの娘」・ジャコメッティ「犬」・ジョン・ジャスパーズ「旗」・マチス「オレンジの部屋」・ベーコン・ミロ・セザンヌなどが印象に残りましたが、今日はやはりリヒターにつきます。
その後、WTC(ワールドトレードセンター)跡へ行く。
ほとんどが壁で隠されており直接的に中は見えませんが、その地区一帯から漂ってくる空気は、他にはない重くどんよりしたものがありました。平然と観光客様に出している、当時の現場写真を写真集として売っている屋台、パスがあれば中を覗ける展望台、それらが渾然として溶け込む事によって生まれる異空間。ミッシングの写真入り広告などを見るとまだ終わっていない現実感が漂い、とても辛く悲しい気分になってしまった。
「とかいいながら チャイナタウンで たらふく食らう 悲しさよ」


3月26日 火曜日 雨     
10:00−12:00
Koさん身体の調子がよろしくないので遅刻、見学。
今日はデイビッドが試したい事があるという事でリーダー。
ルールはいたってシンプル、8カウントで弧を描きながら進んだり戻ったりするだけである。この事を繰り返しながら始点を変えて移動する事によって、様々なおもしろい関係性(並んで歩く・交差する・離れる)が生じてくる。また弧を描いて歩く事で、真っ直ぐ進むエネルギーにはないリズムや流れも生まれてきた。その後ステップアップし、基本的には弧歩きは続けながら、途中ストップしたり16カウントのインプロを混ぜて歩く。(WS発表会レベルでのダンス作品には持って来いである)
それと、後ろ向きに歩く事と人が歩いてくるルートの予想もしないといけない為、絶えず緊張感に包まれている事も、良い影響を与えている一つであろう。
次に、4人一組での「旅する絵画」とでも名づけましょうか、それぞれがシンプルなポーズをとり4人で一つの絵になる。誰からともなく崩れて行き別の場所へ(予め決めない)移動して行き、隣に居た人のポーズにスイッチして尚且つ元の絵の状態に戻る。場所とそれぞれの位置関係をずらしながら数回繰り返し最終的に始まりに戻る。
これのおもしろいところは、お互いの感情が表面化するドラマ性でなく、お互いの身体感覚からドラマが生まれてくるところである。まるで目の前で見てる絵が滲みだし、絵そのものが関係性を持ってキャンパス上を移動して別の場所で絵が復元されて行くイメージである。
ここで一発!ムッシュKo 曰く (今までの数多くのインプロクラスの印象も含めての意見でしょう)「例えその場のインプロであっても、表層的なもの、友好のためのものでなく、もっと火花が散るような、命のぶつかりあう真剣勝負がみたい。そういうものがないと感動は生まれないし、やる意味がないんじゃーない?」(ごもっともです、馴れ合いに見えても仕方ない、私も探りながらの動きなので・・・)
(注・この言葉には私のアレンジが入っているので、正確には違う言い方です。ごめんなさいKoさん)なにはともあれ私としては、それぞれのアーティストが自分の方法論を紹介もしくは試している段階であるとの解釈なので有効な時間ではありました。

15:00−16:00
Joyce Soho にてロン・ブラウンのリハーサルを見学。(黒人ばかり男4人女4人)彼の作り方は、インプロをしたり、ダンサーが意見を出し合ったりする様な作り方ではなく、いわゆる振付をするタイプである。実は私、13年前NYで彼の作品を踊った事があるのです。その当時は白人や南アメリカ人など様々な人種を使って、どちらかといえばアメリカンスタイルでもワイルドでスピーディーでセンスの良い振付をしておりました。
この数年の間、彼の中で何かが(自分のアイデンティテー)目覚めたのか、最近ではアフリカ的な感覚が増えそれと同時にメジャーになって行った様です。ヒップホップとアフリカンを混ぜたような彼独特のリズム感とセンスの良い動きとコンビネーション、意味などどうでも良くなってくるグルーブ感がカッコイイ。

16:30−17:00
DTW訪問(ダンスシアターワークショップ)詳細はDTWのHPで調べて下さい。
劇場は今改装中でこの秋にオープンします。オープニングでロン・ブラウンの公演予定あり。

20:00
ジョイスシアターにて Urban Tapの公演
基本的には一人のタップダンサー兼ディジュリジュ奏者兼ドラマー兼ボイスのMrタマンゴがアフリカンダンサー・ヒップホップダンサー・カポエラ・インドボーカル・アラビアボーカル・トランペッター・チェロ奏者・パーカッション・ライブカメラマンなどのゲストを交えてのリサイタルの形で進行する。アートとエンターテイメントの間、どっちつかずという印象ではありましたが、こういう雰囲気は始めてだったので楽しめました。とにかく皆さん多才な人間が多いですね。と・ところで帰りに道端でjcdnの佐東さんとばったり出くわす。「ハローみんな元気?・・・」(NYに着いた所)

3月27日 水曜日 
10:00−11:30
ジャパンソサエティーで5月20日から始まるレジデンシー京都・スケジュール調整京都での意向をとりあえず皆に聞くも、タイムリミット・次回へ持ち越し。

13:00−14:30
Brooklyn Academy of Music(BAM)でジョン・ジャスパーズのリハーサル見学。のはずが
リストもれの為、それとセキュリティーが厳重すぎて一向に中に入れず待たされていた所、たまたま遅れてきたジョンに口を聞いてもらい中に入る。
(男2人女2人ジョンを含む4人構成)再演のリハーサルであったので、お互いに「どうだったっけ」という軽い乗りでリハーサル進行。基本的に振付したものが時間と共に複雑に絡み合っていく作品の様である。ロンと違うところは、ダンサー達と同じレベルでしゃべり合って作品を一緒に作っていっているところである。ジョン自身も存在が個性的で独特の雰囲気をかもし出しております。(身長185cmぐらいで、ガリガリ)ふと感じたのは、私が今関わっているフランスのミッシェル・ケレメニスと感覚的に近い動きである。

15:30−17:30
New York University(NYU) Ko Murobushi WS 
40名近い生徒が受講。体力不足の為、その内の10人近くは見学へ廻る。
私もデビットも明日の事を考えてリタイア。


3月28日 木曜日 
サロンパフォーマンス(数名の招待客・関係者だけに見せる公演)
8:30−15:00 劇場にてテクニカルリハーサル
Koさんの優しい心遣いで、Koさん早朝のトップバッター(照明・音響が他の人に比べて比較的簡単な為)、次にHeadlong・サラ&パトリック・ヤザキの順番

16:00−17:00
私トップバッターの為、リハ終了後すぐに本番
持ち時間15分しかないと言う事で散々悩んだ末、「スペース4.5」(タナトス小僧のエロスな気分)を縮小したものにする。自己判断・最悪。結果的に15分以内で終わると言っていた他の皆さんは20分以上やっておりました。「正直者は馬鹿を見る」ジャンジャン!

3月29日 金曜日 晴れ
13:30−15:30 NYU(New York University)でシンポジューム
JSポーラさんの司会。サラ&パトリック・デビッド・KOさん・ヤザキ・通訳(彩・平野)
今に至るまでの履歴を一人づつしゃべる。サラ以外は皆、大学からダンスを始めたらしい。以下省略・・・・。  (ポーラさん曰く)とにかくそれぞれが言いたい事をしゃべり、充実したシンポジュームとなった。

20:00
Duke Theaterにて(42st between 7th and 8th ) Yasmeen Godder  and  Andrea
Klein 公演
1部はセリフと普通の動きのパフォーマンス。ごめんなさい途中からコックリコックリ。
2部は心理劇風ダンス、何所か大きな屋敷の応接間のようなところで、男女のデュオが不気味なイメージ(訳もなくニヤニヤしたり、怒ったり、泣いたり、お互いに反応しあったり、無視したり)を隙のないコンタクトでタイミング良くスピーディーに淡々と見せて行く。(優れたテクニックと雰囲気を持ったダンサー達である)前方からのフットライトと、斜めに舞台を区切っている赤いテープの向こう側に電気スタンドがあり、その下の椅子に腰掛けて一人で笑ったり、泣いたりしている女が、効果的に不気味さを引き出している。振付と踊りの演出に興味あり。(From イスラエル)やっぱりね・・・という感じ。


3月30日 土曜日 晴れ
13:00―14:00 フォトコール(プレス向けの撮影タイム)
14:15−16:45 ドレスリハーサル
今回の公演は、NY在住の日本人アーティストにもチャンスをと言う事で、ヨコシヤスコさん・フルカワアキコさん(京都の知り合い)・ハガサトシさんが参加しております。
オーダーフルカワ・ヤザキ・ハガ・サラ&パトリック 休憩 ヨコシ・ヘッドロング・Koムロブシ。
お蔭様でチケットもソールドアウト、思う存分やりましょう。とかいいながらしつこく最後までキューの変更をするいい加減なヤザキ。それを快く受けてくれる太っ腹なスタッフの方々(特に宮井さん)ほんとありがとうございました。
反応もダイレクトに返って来るし、集中しても見てくれる、良い観客に恵まれて無事終了。
レセプションも今日は上機嫌で参加出来ました。よかった・・ほんとうに・・よかった。
(今回の感想)
私の場合、日本がオリジナルの舞踏と違い西洋のダンスから入ってきたので、自分がアメリカ人に対して、刺激のある存在として通用するのか?また彼らに何か与えられるものがあるのか?という不安を大いに抱いておりました。でも日本へ帰ってきて過ごした13年の日々は、まんざら無駄ではなかった事が抽象的・間接的ではありますが確認出来た様に思います。まだこのプロジェクトは続きます。いままでの1ヶ月に出て来た芽を摘まない様に京都に繋げたいと思っております故、これからもよろしくお願い致します。
                     ヤザキタケシ(アローダンスコミュニケーション)








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